日本三大花火大会の一つとして、まずご紹介するのが秋田県大仙市で開催される「全国花火競技大会」、通称「
大曲の花火」です。
その名の通り、この大会は単なる花火ショーではなく、全国から選りすぐられた花火師たちが技と芸術性を競い合う、日本で最も権威のある花火競技大会の一つです。
花火師たちのプライドと最新技術がぶつかり合う、まさに最高峰の舞台と言えるでしょう。
ここでは、大曲の花火の歴史から見どころ、そして観覧のための情報まで、その魅力を深く掘り下げていきます。
大曲の花火の歴史と概要大曲の花火の歴史は古く、その起源は1910年(明治43年)にまで遡ります。
当時、地域の諏訪神社の祭典の余興として花火が打ち上げられたのが始まりとされています。
その後、1915年(大正4年)には「第一回奥羽六県煙火共進会」として競技会の形式が整えられ、東北地方の花火師たちが技術を競う場となりました。
戦争による中断など幾多の困難を乗り越えながらも、大会は年々発展を遂げ、戦後には全国から花火師が参加するようになり、名実ともに「全国花火競技大会」としての地位を確立しました。
現在では、花火技術の向上と花火産業の振興、そして地域活性化を目的として開催されており、打ち上げ数は約18,000発、例年70万人を超える観客が全国、そして海外からも訪れる日本を代表するイベントとなっています。
開催場所は、大仙市大曲を流れる雄物川の河川敷で、広大な敷地が観客席や打ち上げ場所として利用されます。
最大の見どころ:昼花火と夜花火の二部構成大曲の花火が他の花火大会と一線を画す最大の特徴は、全国でも非常に珍しい「昼花火」と、メインイベントである「夜花火」の二部構成で競技が行われる点です。
明るい時間帯から花火を楽しめるのは、大曲ならではの特別な体験と言えるでしょう。
昼花火は、午後5時過ぎ頃から開始されます。
夜空に打ち上げる光の芸術とは異なり、昼花火では青空をキャンバスに、色煙(いろけむり)や光菊(ひかりぎく)、煙竜(えんりゅう)と呼ばれる煙や、様々な形をした落下物(吊り物)を使って模様や色彩の美しさ、形の正確さ、そして打ち上げ時の音(号砲の響き)などを競います。「割物(わりもの)」と呼ばれる競技種目では、玉が開いた瞬間の煙の広がり方や色彩の鮮やかさが評価されます。夜とは違った趣を持つ、まさに職人技が光る競技です。
そして日が暮れると、いよいよ夜花火の部が始まります。
夜花火の競技は大きく分けて「10号玉・芯入割物の部」と「創造花火の部」の二つがあります。
「10号玉・芯入割物の部」では、直径約30cmの10号玉と呼ばれる大きな花火玉を使用し、伝統的な丸く開く花火(割物)の完成度を競います。いかに真円に近い形で開くか、星(光を発する火薬)が均等に美しく飛散するか、中心の芯(しん)が鮮やかに見えるかなどが厳しく審査されます。
一方、「創造花火の部」は、各花火業者が自由な発想で作り上げる、まさに花火の芸術作品です。
特定のテーマに基づき、形、色彩、打ち上げのタイミング、リズム感、音楽との調和など、独創性や表現力が総合的に評価されます。
花火師たちの個性や最新の演出技術が最も色濃く表れる部門であり、観客を驚かせるような斬新な花火が登場することも少なくありません。
これらの競技花火の合間には、大会提供の花火として、豪華なワイドスターマインなどが打ち上げられ、会場のボルテージは最高潮に達します。
「内閣総理大臣賞」とは?競技性の高さ大曲の花火が「最高峰」と称される理由は、その規模だけでなく、極めてレベルの高い「競技大会」である点にあります。
全国から厳しい選考を通過した約30社の花火業者のみが参加を許され、文字通り、日本一の花火師の座をかけて真剣勝負を繰り広げます。
その中でも最高の栄誉とされるのが「内閣総理大臣賞」です。
この賞は、夜花火の「創造花火の部」で最も優れた作品を制作・発表した花火業者に授与されます。
花火師にとって、この賞を獲得することは、自身の技術と芸術性が日本最高レベルであることの証明であり、この上ない名誉とされています。
その他にも、経済産業大臣賞、中小企業庁長官賞、文部科学大臣奨励賞、観光庁長官賞など、様々な賞が設けられており、厳格な審査基準に基づいて評価が行われます。
このように、大曲の花火は単に美しい花火を鑑賞するだけでなく、花火師たちの技術と情熱がぶつかり合う競技としての側面も大きな魅力です。
観客は、審査員のような視点で各社の花火を見比べ、その技術や独創性を評価しながら楽しむこともできます。
毎年、どのような新しい花火が登場するのか、そしてどの花火師が栄冠を手にするのか、その行方にも注目が集まります。
開催時期・場所・アクセス情報大曲の花火(全国花火競技大会)を楽しむためには、事前の情報収集と計画が不可欠です。
- 開催時期:例年、8月の最終土曜日に開催されます。昼花火は17:15頃~、夜花火は18:50頃~開始されるのが通例です。(※正確な日時は必ず事前に公式サイトでご確認ください。)
- 開催場所:秋田県大仙市大曲 雄物川河川運動公園 特設会場(JR大曲駅から徒歩約30分)
- アクセス:JR秋田新幹線「こまち」が停車する大曲駅が最寄りです。当日は臨時列車も運行されますが、駅や列車内は大変な混雑となります。駅から会場までは徒歩で約30分ですが、シャトルバス(有料)も運行されます。余裕を持った移動計画が必要です。車では、秋田自動車道の大曲ICが最寄りとなりますが、当日は会場周辺で大規模な交通規制が敷かれ、IC出口から大渋滞が発生します。駐車場は予約制のものが多く、数も限られています。会場から離れた場所に駐車し、シャトルバスを利用するケースも多いです。渋滞や駐車場確保の困難さを考えると、公共交通機関の利用が推奨されます。